Dies irae 〜Interview with Kaziklu Bey〜【全年齢向け】【萌えゲーアワード2016 燃え系作品賞 受賞】
俺の母親は姉だった。ニューヨークのブルックリンにあるヴァンパイア・バー、怪物園(ボルヘス・ハウス)で、対面のインタビュアーに向ける男の言葉はそんなものから始まった。第二次大戦以降、世界中のあらゆる紛争地帯に現れて、暴虐の限りを尽くす白貌のSS将校。戦場の吸血鬼。彷徨えるハーケンクロイツ。それは陳腐なオカルトめいた伝説(ミーム)として時に噂されるものだったが、単なるありきたりな与太話ではない。彼こそがヴィルヘルム・エーレンブルグ。世界の敵として、国連が極秘に追い続けている第三帝国の残党。聖槍十三騎士団という、魔人たちの一人であった。その彼は今、長年待ち続けた悲願を果たすため日本へ向かおうとしている。普段なら無視か殺すかしていたであろうインタビューなどに応えているのは、約束の時を前に高揚した心が生んだ遊びにすぎない。ともかく、彼はそうした理由で機嫌がよかった。饒舌であり、感傷的にもなっていた。ゆえに今へ至るまでの人生を振り返り、その道程を懐かしむ。問われるがまま、己の過去を明かしていく。魂に食い込んだ血の呪い。拭い去れぬ水銀の業。それを自覚した日、ヴィルヘルム・エーレンブルグとは何者であるのかを、深く刻み付けた少女との物語を。全部、全部話してやるよ。そいつとの出会いから、終いまでをな。